レミゼラブル ドラマ 結末
格差と貧困に喘ぎ、民衆が自由を求めて立ち上がろうとしている19世紀のパリが舞台です。ジャン・バルジャンは、パンを盗んだ罪で19年間投獄されていました。ある日警官ジャベールが、バルジャンのもとにやってきます。19年も刑期が長引いたのは、度重なる脱走事件のせいだとののしりながら、仮釈放書を手渡します。バルジャンは、仮釈放され、街へと戻りますが、誰も受け入れてはくれません。そんな彼を、司教が教会へと招き入れ、温かい食事と暖かい寝床を提供しました。しかしバルジャンは … どうも、夏蜜柑です。2018年12月から2019年2月に英BBCで放送されたドラマです。「レ・ミゼラブル」といえばミュージカルが有名ですが、今回は歌を使わず、ストーリーに重点を置いているという点で、従来の作品とは一線を画したものになっています。コゼットが生まれる前のファンテーヌの人生など、あまり知られていないエピソードも描かれ、見応えたっぷりのドラマになっていました。主人公ジャン・バルジャンを演じるのは、ドラマ「アフェア 情事の行方」、映画「トゥームレイダー ファースト・ミッション」のドミニク・ウェスト。刑事ジャベール役には、映画「グローリー 明日への行進」のデヴィッド・オイェロウォ。ファンテーヌ役は、ミュージシャンのフィル・コリンズの娘で、映画「白雪姫と鏡の女王」で主演を務めたリリー・コリンズが演じています。この記事の目次貧しさからパンを盗んだために、19年間の監獄生活を送ることになったジャン・バルジャン。しかしある司教に出会ったことで生まれ変わった彼は、まったく違う人生を歩き始める… ジャン・バルジャンを中心に、人類愛と当時の貧困と無知が生み出す社会の悲惨さ、そして、19世紀初頭のフランス動乱期の社会情勢を克明に描く。このドラマの原作は、あらすじ空腹のあまり1本のパンを盗み、19年間も服役させられた主人公ジャン・バルジャン。出所後も冷たい仕打ちを受け、他人を信じられなくなったバルジャンは、唯一優しく接してくれた司教を裏切り、教会から銀の食器を盗んでしまいます。しかし司教は「自分が贈ったもの」だと嘘をつき、捕らわれたバルジャンを救いました。司教の博愛の精神に触れて心を入れ替えたバルジャンは、名前を変えて人生をやり直すことを決意。やがて彼は事業で成功を収め、街の市長にまでのぼりつめます。しかし、ファンテーヌとの出会いが彼の運命を変えることに……。何度も映像化・舞台化されている、不朽の名作です。有名なのは2012年に公開されたヒュー・ジャックマン主演のミュージカル映画「レ・ミゼラブル」でしょう。当時、かなり話題になりましたよね。わたしも見ました。残念ながらわたしは原作未読で、子供の頃に「ああ無情」というタイトルで放送されたアニメや、大人になってから見たミュージカルの舞台、映画などで知っている程度。今回のドラマでは原作に近いストーリーをじっくり楽しめるのでは、と期待しています。1815年。ワーテルローの戦いで、ナポレオン一世率いるフランス軍は敗北。テナルディエ軍曹は戦場で倒れている兵士の所持品を略奪しようとし、偶然ポンメルシー大佐を救う。無事生還した大佐は亡き妻の忘れ形見である幼い息子マリウスに会いに行くが、ナポレオンを嫌う保守的な義父ジルノルマンは大佐を追い返す。司教の家から銀食器を盗んだジャン・バルジャンは逮捕されるが、司教は「銀食器は私が彼に与えたもの」と警察官に主張し、バルジャンを解放させる。司教は銀食器に加え燭台も与え、バルジャンに善人として生きることを約束させる。だが司教の家を出たバルジャンは、通りすがりの少年プティ・ジェルベが持っていた40スーを盗んでしまう。バルジャンはすぐに後悔して金を返そうとするが、少年の姿は消えていた。ファンテーヌのもとにコゼットが病気だというテナルディエ夫妻からの手紙が届く。ファンテーヌは自慢の髪と前歯2本を売って夫妻が要求する金を用意する。味を占めたテナルディエ夫妻はさらに多額の金を要求し、ファンテーヌは娼婦に身を落とす。クリスマスの夜、テナルディエ夫妻が営む宿屋にバルジャンが現れる。バルジャンは1500フランを払ってコゼットを引き取り、2人はパリで暮らし始める。金づるのコゼットを取り戻そうと考えたテナルディエ夫妻は、警察に誘拐の届出を出す。10年後。コゼットは修道院で美しい娘に成長する。バルジャンは庭師として働きながらコゼットを見守り、このまま修道院で人生を終えることを望んでいたが、コゼットは外の世界を見たいと訴える。2人は修道院を出てパリでの新生活を始める。テナルディエは仲間を集め、部屋に現れたバルジャンに襲いかかる。ジャベールたち警察はマリウスが発砲したピストルを合図に部屋に踏み込み、テナルディエ一家は逮捕される。バルジャンは窓から屋根伝いに逃げ、コゼットが待つ屋敷に辿り着く。共和国を掲げるアンジョルラスたちの先導で、パリ市民は各地にバリケードを築く。ジャベールはバルジャンこそ暴動の先導者だと思い込み、市民のふりをしてバリケードに潜入するが、警察官であることが露見し拘束されてしまう。バルジャンはテナルディエの手引きで下水道から脱出するが、待ち構えていたジャベールに逮捕される。ジャベールはマリウスを祖父ジルノルマンの元に送り届けた後、バルジャンの手錠を外して家に送り届け、そのまま見逃してしまう。ミュージカルではない「レ・ミゼラブル」、とても新鮮でした。この物語をここまで濃密に描いた映像作品は初めてだったので、面白かったです。おおまかなあらすじは知っていても、細かい因果関係については知らないことが多く、「そういうことだったんだ!」と腑に落ちることがたくさんありました。原作とは異なる部分もあるみたいですが、登場人物が複雑に絡み合っていて、全員なんらかの形で繋がっているところも面白かったです(現代ならツッコミどころ満載)。前半のクライマックスは、ファンテーヌがジャン・バルジャンに娘を託して亡くなるシーンでしょう。この場面は何度見ても泣けますが、今回のドラマではファンテーヌの半生を時間をかけて丁寧に描いていた効果もあって、いつも以上に心を揺さぶるシーンになっていました。ファンテーヌが背負う不幸は、この物語の中軸と言ってもいいんじゃないかと思います。原題の「Les Misérables」は、日本語に訳すと「悲惨な人々」「哀れな人々」を意味します。彼女はその代表格でした。テナルディエ夫妻を善人だと信じ、娘のために(よく考えもせず)髪と前歯を売り、ついには娼婦に身を落としてまで、夫妻に言われるがままにお金を送り続けるファンテーヌ。テナルディエは「彼女は大金を稼いでるんだ」と思い込み、ますます図に乗って多額の金を要求します。彼女が無知で、読み書きができないことも不幸でした。ファンテーヌはテナルディエに殺されたようなものですが、数々の悪行を重ね人々を不幸に陥れたテナルディエは、最終的にはポンメルシー大佐を救った〝命の恩人〟として許されます。〝命の恩人〟と言っても、盗みを働こうとして偶然助けただけなので、まったく納得がいかないんですけどね。無知と、悲惨と、慈愛。後半のクライマックスは、六月暴動とジャベールの自殺でした。六月暴動のシーンは迫力満点。ミュージカルでは革命のヒーロー的存在のように描かれていたマリウスが、実はそうではなかったこと。コゼットに恋い焦がれるあまり、革命など二の次になってしまうマリウス。このドラマで描かれるマリウスは、正直あんまりカッコよくない。エポニーヌびいきのわたしとしては、彼女の一途な恋心がわかりやすく伝わるシーンを作ってほしかったなぁ。死の場面もあっさりしていて、残念でした。ジャベールが川に身を投げるまでの苦悩は、丁寧に表現されていてよかったです。仇敵バルジャンに命を救われてから、ジャベールの中の信念が崩壊していくさまが彼の表情や態度から伝わってきて、彼の苦悩に共感することができた。法だけを信じて生きてきた彼は、法では支配できない世界(キリスト教の博愛精神)の存在をまのあたりにして、どうすればいいかわからなくなったのだと思います。新しい価値観を簡単に受け入れられるほど、柔軟ではなかったのでしょうね。ジャベールの孤独な死を見届けるのが悪人のテナルディエだけ、というところにも皮肉が効いてます。▼コゼットとマリウスに看取られ、苦難に満ちた人生を幸福な最期で閉じたジャン・バルジャン。連続ドラマでも駆け足だと感じるほどの波乱の人生でした。全8話(オリジナルは全6話)で見応えのあるドラマになっていましたが、原作を読んでいたら「物足りない」と思うかも知れませんね。映像化や舞台化など、この物語が何度も形を変えて生き続けているのは、いつの時代でも人々の心を揺さぶる力を持っているからだと思います。オリジナルの持つ魅力はもちろんですが、新しい作品に触れることで、これまでとは違う楽しみ方、感じ方ができるのが嬉しいです。次の記事 夏蜜柑