劇団四季 美女と野獣 歴代ビースト
ビースト福井晶一ベル坂本里咲モリース松下武史ガストン田島亨祐ルミエール百々義則ルフウ遊佐真一コッグスワース吉谷昭雄ミセス・ポット遠藤珠生タンス夫人大和貴恵バベット長寿真世チップ牧野友紀実に12年ぶりの東京公演となる「美女と野獣」が開幕した。 実に12年ぶりの東京公演となる「美女と野獣」が開幕した。京都や福岡、広島や静岡などでも観てはいるが、大好きな作品にもかかわらず比較的(あくまで本人比)観た回数は少ない。そう考えると関東でのロングランはやはり嬉しいものだ。初日を迎えるにあたって、注目のポイントは2つ。1つは新たに作られた「四季劇場・夏」だ。大井町駅からやや遠回りに商店街を歩き、その中ほどを右に折れて10メートルほど歩くと突如右手に見えてくる。徒歩5分。商店街には飲食店も多いので、観劇前にちょっと飯でも、というニーズには応えてくれそうだ。「スマートチケット」とかいう、QRコードつきのチケットをリーダーにかざすと、だいたいの座席位置を示す紙がプリントされて出てくる。慣れない人もいるので入場にやや時間はかかっていたが、システムそのものは快適に動いていた。ただ、ガラケーの画面にQRコード、ってのはやや古いかなあ、とも思う。この際四季の会会員カードをFelica対応にしたらどうか。ついでにいっそ「四季カード」の発行に手を染めてくれても…特典にちょっと期待。1階のロビーはちょっと狭め。2階のほうが余裕があるが、椅子が少ないため床に座り込む児童がちらほら。その2階にスナックコーナーがあり、VIE DE FRANCEのパンを売っている。なので他の劇場に比べればサンドイッチやホットドッグなどのコストパフォーマンスは悪くない。ドリンクメニューに、アイスカフェオレがなかったのは残念。男子用トイレは1階、2階ともに狭い。2階のほうがわずかに広い。客席数を考えれば2階の利用がおすすめだ。女子トイレの内情はわかりません。と、劇場観察もそこそこに席に座る。生オケでないのは悲しい。なんだか音質のイマイチな録音のオーバーチュアとともに幕があがった。もう1つの注目ポイント、それは何といっても福井晶一ビーストの登場である。福井ビースト、と聞いたとき、「それはピッタリだ!」と感じた。新しいビースト役の名を聞いてそう感じたのは2回目。1回目は、ついに舞台に登場することはなかった、初演の山口祐一郎だ。その他の役者の場合、芥川英司も、荒川務も、石丸幹二も、今井清隆も、柳瀬大輔も、最初は「イメージが違うな」と感じたものだ。もっとも、実際に観るとそんな違和感は吹き飛んで、みな実に魅力的、個性的な愛すべき野獣たちだったが――。その期待の新ビーストが舞台に登場。果せるかな、まさしくディズニー版美女と野獣のビーストそのものだった。大きな体に小さな心臓。傲慢さと純粋さが同居する、恐ろしくて、かわいくて、せつなくて、ちょっと面白いビーストがそこにいる。演技だけ、あるいは歌だけ見れば、歴代のビースト役者のほうが上を行っているかもしれない。だが福井晶一の場合、存在そのものがビーストになりきっているのだ。このビーストを見てしまうと、これまでのビーストはみな「うまくこなしていた」ように思えてしまう。一幕最後の「愛せぬならば」。福井が「愚かなヤツ…」と歌い出した瞬間、背中がゾクゾクッとした。悲痛な思いを絞り出すように、しかし堂々と歌い上げるその姿と歌声に触れたら、男でも惚れてしまいそうになる。女性であれば、そして福井ファンであれば、卒倒すると思う。笑いもきちんと取れていた。ところどころ、他の役者なら笑いが起きる場面でそうならないこともあったが、逆に他の役者なら笑わせないところで笑いが起きていた。福井ビーストの、いかにも人づきあいの苦手な不器用さが、期せずして笑いを誘うのだ。フィナーレではアレの動向が非常に気になったが、カツラをかぶっていることもあり、さほど心配するに至らなかった。「多少おでこの広い人だな」というぐらいだ。それも含め、王子に見えるかどうか気をもんでいたが、これは大丈夫。眉毛のキリッとした、精悍な顔つきのカッコいい王子である。まあ王子というより王様かもしれないが。きっと、野獣に変えられる前はもっとだらしない顔だったのだろうが、苦労して、さらに愛し愛されることを知ったことで、顔つきが変わったのだろうな、などと妄想したくなる。だからコッグスワースは最初誰だか分らなかったのだ。福井ビーストを見るだけでも、この公演に足を運ぶ価値はある。今回こそは、最初だけ出してすぐキャスト変更、ってのはナシですぜ。ベルには坂本里咲。個人的に大好きな女優さんだし、声もかわいいのでベル役で十分通用するのだが、そろそろこの役は若手にバトンタッチすべきと考える。東京初演では、堀内敬子や濱田めぐみの大抜擢があった。ぜひ今回の公演で、四季を引っ張る新たなヒロインが生まれることを期待したい。その前に、まだ見てない沼尾めぐみのベルは見たいけど。ビースト以外は経験者の多い、安定感のあるキャスト陣ではあるが、ガストンやルミエールにはもっと強烈さが欲しいのも偽らざるところだ。「美女と野獣」は、アニメーションをそのまま舞台にしたような作品だ。もっとデフォルメした、派手な演技が見たい。やはり歴代のガストンでは、今井清隆の印象が非常に強い。背はちょっと低かったけど何ともアクの強い、食えないガストンだった。自分はアニメーション版を見たときから、このガストンというキャラクターが大好きなので、これを誰が演じるかはビーストやベル並みに気になるのだ。吉原光夫のガストンを見逃したのは全くもって残念だ。この作品限定でいいから戻ってきて演じてほしい。一方ルミエールは、下村尊則の系譜を道口端之が受け継いでいるが、もっとヘンなルミエールが出てきてくれると嬉しい。遠藤珠生のミセス・ポットは初見。歌も表情も、なかなかチャーミングなポット婦人である。アンサンブルでは、シュガーポットがちょっこし気になった。この東京公演がいつまで続くか分からないが、福井ビーストがどう進化していくのか、新キャストがどう入ってくるのか、楽しみに通いたい。横浜→大井町のシーサイドなハシゴ観劇もそのうち実践することになるだろう。